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おおきな木(篠崎書林)

おおきな木   篠崎書林 シェル・シルヴァスタイン作・絵 ほんだきんいちろう訳
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..... 『自由からの逃走』(Escape from Freedom 1941年)の著者、エーリッヒ・フロムが、かつて愛を論じたとき(『愛するということ』The Art of Loving 1956年)、「愛とは第一に与えることであって、受けることではない」と主張したのを、記憶している人も多かろう。これこそ、この物語に貫流する中心的な思想なのである。しかし、「与える」とはなにか。なにかを断念することか、奪われることか、あるいは喪失することか。いや、そうではないとフロムは言う。「与える」ことは人間の能力の最高の表現であり、「与える」という行為においてこそ、人は自分の生命の力や富や喜びを経験することになる、と考える。一本のりんごの木は、この主張そのままに、ひとりのともだちに、自分の肉体をけずって、木の葉を与え、果実を与え、枝を与え、幹を与え、すべてを与える。母性愛さながらに−。しかも、ここで、最も重要かつ微妙な問題は、この「与える」行為に、犠牲の行為を見てはならないという一点であろう。犠牲には悲劇的な感情がつきまとうのが常であるが、りんごの木が、ただひたすら喜びだけを見出していたことに読者は注目すべきである。 .....
(あとがきより抜粋)

<読者レビュー>
この絵本は賛否両論を巻き起こすだろうな、と思いました。 感動する人もいれば、そうでない人もたくさんいそうです。
「無償の愛とは何ぞや」「この木は本当に幸せだったのだろうか、男の子はどうだろうか」 など、読み手に考えさせられる深いテーマがそこにはあります。
読み終わった後に、「無償の愛」に感動するだけのストーリーではないこの本。子どもにはちょっと難しいような気もしますが、楽しいだけの絵本から一歩進んだ読書ができるという点でお勧めです。 (荒井良二子さん 男8才)