読み聞かせの効用
2011年2月19日

この度、素敵なご縁があってこの「おーすとらりあ こどもとしょかん」のサイトに私のコラムを掲載させて頂く機会を得て、とても嬉しく思っています。 私自身は、娘が3か月くらいの時から読み聞かせを始めました。 それは、日本語教師としてではなく、バイリンガル育成を狙ったわけでもなく、単に娘との至福の時を過ごしたい、そして自分が子ども時代に体験できなかった読み聞かせの歓びを娘に対して実現したいという自己満足もあったからでした。 そんな自分本位な思いからスタートした「読み聞かせ」だったのですが、絵本に関する書籍を読み、童話館(長崎にある童話専門の出版社)からの配本とニュースレターを受け取るうちに、「読み聞かせ」の素晴らしさに触れることができました。 また現在も関わっている英語圏で暮らす子ども達への日本語教育(継承日本語教育)の取り組みを通して、「読み聞かせ」が日本語の育成にも非常に有効だと実感しています。 今回は「読み聞かせの効用」について3つの観点からまとめてみました。

読み聞かせの効用 その1 精神的な安定
子どもにとって絵本を読んでもらうのは、親の時間を独占でき、物語にドップリ浸れる空想の時間です。 特に二番目以降の子どもの場合は、親になかなか時間を割いてもらえないこともあるので、読み聞かせで親子の絆を深めることができると思います。 また私のきっかけがそうであったように、読み聞かせは、子どものためだけでなく親のインナーチャイルド(自分の中にある子ども時代の記憶や感傷など)の癒しにも非常に役立ちます。 親子で絵本を介して、空想の世界を共有できるのは、とても貴重な体験です。

読み聞かせの効用 その2 確かな想像力・理解力を育てる
文字を読み始めた子どもや、リーディングが苦手な子にとっては、本を読むこと=大変でつまらない作業 となっていることがあります。 まずは、大人のしっかりした朗読で本を読んでもらって、物語に入り込み、内容を理解できるようになることが大切です。 話を聞いて理解する能力は想像力・思考力の基礎です。 お話を楽しむ体験を通して、本の世界に魅力を感じるようになれば、自然と子どもは本を読むようになると思います。 どうか子どもが自分で本を読めるようになったから、と言って読み聞かせを止めないでください。 自分で本を読んで楽しむことと、読んでもらう楽しみはまた違います。

読み聞かせのメリット その3 聴解力を高め、語彙力を伸ばす
お話を聞いて理解する聴解力が最近なくなってきているという話を聞きます。 人の話が聞けない、要点がわからない、3つ以上の指示が理解できない、などです。 楽しいお話の朗読を習慣的に聞いていれば、しっかり集中して聞いて内容を理解する聴解力へと繋がっていきます。 また自分で読むのは難しいような内容のお話を聞きながら、未知の言葉と出会い、想像力を働かせ、語彙力を伸ばすことが可能です。 私達もそうして昔話の独特の言い回しを覚えたりしたのです。 また英語圏で育つ子ども達は同じような過程を経て、難しい英単語を身につけています。 ですので、絵本に記されている独得の言い回しや難しいと思われる言葉も親の判断で言い替えず、できるだけ原文を読みその言葉が醸し出す雰囲気を伝えてください。

最後に、、、理想から言えば、読み聞かせは中学生になってもしたほうが良いそうです。 だからと言って突然中学生の子に読み聞かせをしてもお互い抵抗があると思います。 「そろそろ読み聞かせ卒業」と思っていた皆さんも止めずに続けてください。  子どもが幼い時に蒔いた読み聞かせの種はすぐに大木にならないかも知れませんが、続けていくことでしっかりと言葉の大地に根を張り、空想力や思考力という枝葉を広げながら、必ず子ども達の心や言語の発達などにも良い影響をもたらしてくれると信じています。