今だからこそ日本人の親としてできること
2011年4月30日

3月11日に起きた東日本大震災にさいして、犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りします。現在でも困難な状況にいらっしゃる方々の状況が一日でも早く改善されることを願ってやみません。 そんな祖国の有事を海外で知り、現地メディアの情報と日本からの少ない情報の中で「何ができるだろう?」と葛藤され「海外にいていつも通りに生活できることが、申し訳ない。」と罪悪感を感じていらっしゃる方も多いと思います。私自身も最初は混乱し、家族と過ごす時間よりも募金やファンドレージングなどの支援活動に出かける事が多かった時期もありました。しかしシュタイナー教育を実践されている先生方と慎重に話し合った結果、次のような優先順位を私達親がしっかりと認識しておく必要があると考えました。

  1. 被災していない私達も日本の状況を見たり、日本にいらっしゃる方を心配したりして精神的なショックを受けています。ご家族やご友人を亡くされたり、被害に遭われた方をご存知の場合は、ショックはさらに大きいと思います。まずは、ご自身が今ある状況に感謝して、 ご家族と過ごす時間をしっかりと取るようにしてください。安心できる方と安心できる時間を過ごす事はダメージを受けた心のケアに役立ちます。
  2. 子ども達(特に9歳未満)に震災の映像を見せたり、被害の状況を詳しく話したりして、日本の悲惨さだけを伝えないようにしてください。9歳未満の子ども達にはテレビなどで見る映像や大人の話と自分達の生活の区別が付きません。そのような怖い状況が自分のところでも起こってしまうのではないか、という不安だけを植え付けてしまいます。現実を知ることも必要ではないか、と思われる方もいらっしゃると思いますが、9歳までの子ども達に最も大切なのは、彼らにとって安心できる場所(家庭)や信頼できる人(家族や友達)がいるという愛のある環境を学ぶことです。愛のある環境を知っている子ども達は、将来、困難を乗り越えたり、どんな状況でも希望を持って生きる力があると信じています。
  3. 子ども達には意図的に日本人が大変な状況でどのように頑張っているか、助け合っているか、という話をしたり、オーストラリアを始めたくさんの国々が日本を応援しているという事を伝えてください。私達、日本人の親がまずは尊敬の念をもって日本人の話をし、感謝の気持ちを持って海外からの支援を伝える事が真の国際人を育てる上で大切だと思います。

今回は、「読み聞かせ」や「日本語教育」の内容から離れている、と思われるかも知れませんが、私は上記の3点(1.心の安定 2.愛のある環境 3.日本人としての誇りと周りへの感謝)が海外で子育てをする際の土台になると思っています。

第一回目のコラムでも書きましたが、「読み聞かせ」の時間は親子の精神的な安定にとても役立ちます。どうぞ、今だからこそ親子でゆっくりと安心して絵本を楽しむ時間を取ってください。

また「日本語教育」「バイリンガル教育」についていくつかご質問を頂いていたのですが、親の私達がまず大切にしたいのは、
・子ども達が海外に住みながら、日本人バックグラウンドを持つことを前向きに捉える事
・日本や日本語について良い体験をする事
の2点だと思っています。ですので、言語の発達という狭い意味だけでなく、子どもの人格形成という大きな視野で「日本語教育」や「バイリンガル教育」を捉える必要があると思っています。 次回からは頂いたご質問にお答えしながら、そのあたりを考えてみます。